312849 ランダム
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chapter9

LastGuardian

chapter9「Check」

デルタブロウカーズの力は伊達ではなかった。
現在進行形のエース3人が、人を守るべく敵を倒す。
しかし、一方のオローズも3人を相手に無傷であった。
リーチの長い槍を振り回し、3人の接近する隙を削る。

オローズ(さすがはエース・・・一瞬の迷いが命取りとなる・・・)

なおも、接近してくるレドナとカエデの大剣を槍で弾きつつ、相手の隙を見抜こうとする。
しかし、中距離から魔法攻撃を放つロクサスにも注意をおかなければならない。
逃げるので精一杯と言ったところだ。
だが、レドナも同じようなことを考えていた。
レドナにしても、攻撃を連続で続けているからこそのこの結果である。
無論、レドナにも限界というものがある、それが来ればオローズの反撃を防げない。
今は攻撃し続けることが最大の防御になっていると言っても過言ではない。

レドナ(隙を見て一気に決めないと・・・。
    時間をかければ奴等が上がってくる・・・)

相手の切り札がお互い分からない以上、賭けのしようがなかった。
しかし、オローズは時期が来れば勝利が確定することを知っていた。
それを立証させたのが、シルフィーゼの黒衣の内で光る石だった。

ふと、オローズは鍔迫り合いを後方に飛んで逃げた。

オローズ「レドナ、お前なら内で光るその石の正体を知っているだろう?」
レドナ「あぁ、天鳴石、ヒュルイエの復活が目的だってのも解ってる」

天鳴石、以前まだレドナがラストガーディアンとして覚醒するかなり前。
大きなエクステンドとシュナイガーとの戦争が起こった。
序盤はエクステンド側が押していたものの、後半シュナイガーが切り札を使用した。
古代の封印獣、天鳴のヒュルイエである。
その怪物の力は圧倒的で、エクステンドは窮地に追い込まれた。
だが、エクステンド側の必死の攻撃により、ヒュルイエを封印することに成功した。
その後は両者とも撤退をして、その戦争を終えた。
ヒュルイエを封印した石は天鳴石と名づけられ、再使用がないように、地球上に隠された。
隠した場所はランダムであり、偶然にもその場所が神下市であったのだ。

シュナイガーの、イクトゥーの目的は何者かの降臨。
つまり、ヒュルイエの復活であるのだ。

カエデ「ちょ・・・ヒュルイエって!」
ロクサス「あんなもんがまた出てきたら、やべーよ!」

その時、崩壊した橋の下から水しぶきと共に2つの影が現れた。
アギトとリリアムだ。

オローズ「そう、ヒュルイエこそ復活できれば、今度こそ確実にエクステンドを潰せる・・・。
     だから、その天鳴石を渡してもらう!!」
レドナ「させるかよ!!いくぜ、皆!」

第二戦目は、3対3の激戦となった。

レドナ「フィーノが戻るまであまり前にでるな!
    なるべく敵の体力を消耗させろ!」
カエデ「オッケー!」
ロクサス「分かったぜ!」

オローズ「さっきも言ったとおりだ、危なくなれば奴等を使う!
     それまで全力でいけ!」
アギト「了解です!」
リリアム「あいよっ!」

オローズは槍を振り回して構える。
そのまま、レドナを目掛けて突進した。
グリュンヒルでそれを防ぐ、同時に大量の火花が一瞬にして散った。
踏みとどまって、リグティオンを構え発砲する。
近距離にも関わらず、俊敏な動きで槍でそれを弾く。
空いた隙を再びグリュンヒルの斬撃で突く。
再びくるりと槍の先端でグリュンヒルを受け止めた。
尽かさず、刃のない柄の方をリグティオンで抑える。

オローズ「黙って渡してくれれば、今日のところはこのまま下がってもいいが?」
レドナ「ざけんな!その前にお前を叩き潰す!!」

一気に地面を蹴り、槍の柄を踏み台にし、高くジャンプする。
そのまま真下に向かって、リグティオンを発砲する。
蒼白い閃光が一気にオローズ目掛けて駆け巡る。
5本の閃光のうち2本をフェイントで橋の手すりにぶつけ、残りの3本を槍で切り裂く。

だが、ちょうどそこにレドナがグリュンヒルの先端を真下に向けて降下してくる。
咄嗟に横に低く飛んで回避する。
0.数秒前までオローズがいたところはグリュンヒルの刺突で抉れた。


一方の、フィーノは、魔法陣から真と香澄を出すために2人に解除魔法をかけていた。
しかし、数回やっても2人はずっと魔法陣内のままで、脱出ができなかった。

フィーノ「あれ・・・なんで解除魔法が・・・う~ん、もう一回やってみますぅ」

ぶつぶつなにが呟きながら、杖を振る。
だが、結果はさっきと変わらなかった。

香澄「たしかに、ちゃんと脱出テストした時みたいに、浮く感じはするんだけど・・・」
真「その後は普通に元の世界に戻れていたんだよなぁ」
フィーノ「脱出魔法は1つしかないから、間違ってるはずはないんですけどぉ・・・あっ!」

思いついたように、フィーノが大きな声を出した。
そして、フィーノは再び範囲系魔法陣を小規模で展開させた。
すると、できないはずの魔法陣が展開された。

フィーノ「や、やっぱり・・・」
真「どうゆうことなんだ?」
フィーノ「この最初にはった魔法陣の権限が替えられているんです。
     だから、展開者は私じゃなくなったから、脱出は・・・・」
香澄「え?だって、展開したのはフィーノちゃんのはずじゃ・・・」

もちろん、この作戦開始時、範囲魔法陣を展開したのはフィーノ。
権限もフィーノになければならない。
しかし、今はそれを否定されている。
無論、脱出等も展開者でなければ、することは出来ない。

真「まさか、向こうで戦っている奴等が・・・?」
フィーノ「可能性はありますね・・・」

どうしようと思い、フィーノは俯いた。

香澄「フィーノちゃん、暁君たちの加勢に行って」
真「おう、俺たちも、全力で逃げ隠れしとくからさ!」
フィーノ「で、でも・・・・」

レドナからは、何かあったときは2人のそばに居るよう言われている。
それを無視したら、レドナに何を言われるか分からない。

真「大丈夫だって、俺たちは簡単にくたばらないって!」

落ち込むフィーノの肩を、真が優しくたたいた。

香澄「回復魔法が使えるのはフィーノちゃんだけだから。
   フィーノちゃんが行ってあげれば、戦いも直ぐに終わるはずだよ!」
フィーノ「真さん・・・香澄さん・・・」

フィーノの目に涙が浮かぶ。

真「さ、はやく!」
フィーノ「・・・出来る限り、遠くに逃げてください。
     ご無事をお祈りしています!」

そういって、フィーノは激戦区である、神下大橋に向かった。
今もなお、向こう側からは煙と爆発が立て続けに起こっている。

姿が見えなくなるまで2人はフィーノを見送った。

香澄「あぁは言ったものの・・・どーしよっか?」
真「とりあえず、全力で逃げようぜ!」

そういって、2人は全力で駆け出した。


カエデ「くっ、あんた中々やるじゃん・・・!」
アギト「敵にするにはレドナと同じく惜しい力ですね・・・!」

蒼白のグリュンヒル、グリュンヒルホーリーを突き上げる。
鎌でそれを受け止め、弾き返し後方にジャンプして距離をおく。
ジャンプ後を、尽かさず漆黒の剣、グリュンヒルの切っ先が弧を描いた。
アギトは一旦は距離をおいたものの、すぐに自分が不利になることは薄々気づいていた。
数メートルの距離を一瞬で縮め、目の前で赤い髪を靡かせるカエデがそれを立証していた。

カエデ「距離置くだけじゃ無駄だって!」

蒼白と漆黒のグリュンヒルが十字に襲い掛かる。
アギトの鎌が弾き飛ばされ、地面に突き刺さる。

アギト「し、しまった・・・!!」
カエデ「終り・・・って、えぇっ!?」

振り上げたグリュンヒルに、赤いロープが巻きついた。
瞬時にその方向を見ると、ロクサスの魔法攻撃を2本のロープでガードするリリアムが見えた。
空いている2本を、カエデの攻撃封じにこっちに飛ばしてきていたのだ。

リリアム「今のうちに!」
アギト「すみません、リリアム」

くるりと翻り、低く飛んで地面に突き刺さった鎌を取り、構える。
即座にロープはグリュンヒルを放した。
どうやら、向こうも向こうで精一杯らしい。

戻ってこさせたロープを、すぐさまロクサス目掛けて向かわせる。

ロクサス「えぇい、しつこすぎだって!!」

軽いトゥワイスブレードを振り回し、ロープを弾く。
連続攻撃が来る前に、地面に側転してちょびちょび距離を変えていく。

リリアム「あんたもちょこまか動くんじゃないよ!!」

ロープが一気に最大限の8本、フルに展開する。

ロクサス「うわ、やっば!!」
フィーノ「プロテクトッ!!」

咄嗟に剣を盾代わりに構えるロクサスの前方に、防御フィールドが張られる。
振り向くと、そこにはフィーノ姿があった。

ロクサス「た、助かったよ・・・」
フィーノ「遅くなりました、防御と回復は任せてください!」

傷ついた3人に、回復魔法をかける。

レドナ「よっし、こっからは一気に決めるぜ!!
    フィーノ、回復準備忘れんなよ!」
フィーノ「了解ですっ!」

攻撃メインの3人は、一気に荒々しい戦い方へとスタイルを変えた。
慎重な防御は一切捨て、相手にほんの見逃すような隙が生まれた瞬間、そこに斬撃を叩き込む。

オローズ「ちっ・・・あれ使うぞ!」
リリアム「あいよー!」
アギト「分かりました」

3人は一気に後ろにジャンプした。
そして、リリアムとアギトは呪文を唱え、転移魔法を発動させた。

レドナ「逃げる気かよ!!」
オローズ「いや、お前の負けをここに呼び出すんだ」
レドナ「!?」

レドナは、その転移魔法で連れてこられたものを見て目を見開いた。
レドナだけではない、他の3人も、驚きを隠せなかった。

レドナ「真っ!!香澄っ!!」

連れてこられたもの、それは紛れも無く真と香澄であった。
2人はどうやら気絶しているようだった。

レドナ「くそっ・・・いつのまにここの権限を奪い変えやがった!!」
オローズ「教えてやろう、この神下市自体が既に罠だったのさ!
     神下市全域にあらかじめ魔法陣を展開しておく。
     その内部で展開したお前達の魔法陣を、外から俺の魔法陣で打ち消したのさ!」

レドナはやっと理解できた。
何故、オローズが最初のうちは攻撃をしてこなかったのか。
そう、それはむやみに動くと広範囲魔法陣の魔力がなくなるからだ。
相手をその気にさせて、あとから魔法陣の範囲を収縮させる。
そして、自分も動き出す。
完全にレドナ達の頭脳負けであった。

オローズ「さぁ、交換だ、この2人の命と、その天鳴石をな!」

槍で、シルフィーゼの黒衣の中で光り輝く石を指した。
同時に、アギトの鎌が、気絶している真と香澄の首に突きつけられた。

レドナ「や、やめろぉぉぉっ!!!」
カエデ「卑怯よ!」
オローズ「ほざけほざけ!さぁ、交換するか、しないか!!」

皮肉った声が、レドナの脳でガンガン響く。
レドナは、地面に両手をつけ、自分の失敗を悔やんだ。
関与させすぎてしまった。
関与させなければ、こんなことにはならなかった。
普通の、戦いに何も関係してはいけない人を、関係させてしまった。
レドナの目から、一筋の涙が零れた。

オローズ「あぁ、交換しなくていいのか。
     やれ、アギト・・・」
レドナ「待てぇっ!!渡す・・・天鳴石を渡す!!」

なきながら、くしゃくしゃになった顔で、レドナが懇願した。
カエデもロクサスも、こんなに惨めなレドナの姿は初めて見た。
ポケットに手を入れて、オレンジ色の光り輝く天鳴石を取り出した。
それを、オローズに向かって投げた。

オローズ「交換成立、まぁ、どうせ神下市もあと少しの命だ・・・。
     それまでこいつ等と思いでとかいうくだらないものでも作っておきな!はっはっは!!」

天鳴石を受け取ったオローズは、転移魔法を使って魔法陣内から出た。
アギトも鎌を下ろし、リリアムと共に出た。
3人の影が消えてから、レドナは真と香澄に駆け寄った。
そして、神下大橋の端の歩道に寄せた。
少し経って、魔法陣は消滅し、通常の時間とリンクした。
さっきまでの橋は元に戻り、沢山の車が行き来している。

レドナ「真・・・・香澄・・・・っ!!」

必死に、レドナは2人に呼びかけた。
声がかれるまで、泣きながら―――。

2人が目を覚ましたのは、それから30分後、鳳覇家でのことだった。
さすがに、人通りもそこそこ多い神下大橋で2人が倒れているとなると周囲も不審に思う。
だから、急いで担いで鳳覇家へと運んだのだ。

真「・・・うっ・・・・ここは・・・?」
香澄「あれ・・・私達・・・」
フィーノ「お2人とも、目が覚めましたか」

見ると、フィーノが1人居るだけで、他の3人の姿は見当たらなかった。

真「あれ・・・暁達は・・・」

ソファーで横になっていた真が、体を半分起こす。

フィーノ「実は・・・・」

フィーノはさっきの戦闘の事についてすべてを話した。
そして、それからレドナがイクトゥーを探しに1人で出て行ったことも。
それをカエデとロクサスが追いかけていったことまでを。


PM7:00。
レドナは神下市の隣の市、月影市に居た。
ゴミ処理場のフェンスを引き裂いて、立ち入り禁止区域に入る。
飛び越えようかと思ったが、U字鉄線が張り巡らされていたため諦めた。
そして、何故ゴミ処理場なのかと言うと、これにも理由があった。

レドナは、隠れて自分で調査を進めていた。
それは敵、イクトゥーの集合場所。
現在確認できているだけでもイクトゥーは4人。
多めに考えて5、6人と見ていたほうがいいだろう。
それだけの人数が集まって話すのであれば、広く、人目につかない場所を要する。
しかし、それは神下市には見当たらない。
だが、月影市のゴミ処理場はどうであろう?
周囲は木が多い茂り、ゴミ処理場の半分はゴミの山であり、近づくバカはそうそう居ない。
となると、そこがイクトゥーの集合場所であることは簡単に察しがついた。
それに、近づくたびに感じていた魔力の大きさもそれを裏づけしている。

そして、レドナの眼前には4人の黒いコートをきた集団が居た。
アギト、リリアム、オローズ、ヒャイムである。
その中の1人がそれに気づき、振り返る。

オローズ「ん・・・おぉ、これはまたいい客が来たな」
レドナ「・・・・・」

レドナは何も言わず、ただ魔法陣も展開させず、グリュンヒルとリグティオンを握り締めた。
無言で歩くレドナの神下中学校の制服が弾け、シルフィーゼの黒衣に変わる。

オローズ「まさか、1人でコイツを取り戻しに来たのか?」
レドナ「・・・・・ろす」

小さくレドナは呟いた。
しかし、それはオローズの問いへの返答ではなかった。

リリアム「おい!なんか言ったらどうだい!?」

じれったいようにリリアムが怒鳴りつける。
だが、レドナは小さく呟き、だんだんと4人との距離をつめるだけだった。

そして、レドナが顔を上げて、怒り狂った赤い目を相手に見せ付けた。

レドナ「ぶっ殺す!!」

静かなゴミ処理場のゴミの山に、レドナの叫びがこだました。
周囲の鳥が驚き、一斉に飛び立った。
それと同じく、レドナはグリュンヒルとリグティオンを強く握り締め、咆哮と共にイクトゥーへと向かっていった。

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